DREAM INTERVIEW

各界リーダーへの夢インタビュー

平林 景
株式会社とっとリンク代表取締役/一般社団法人日本障がい者ファッション協会代表理事

福祉×おしゃれをキーワードに、障がい・福祉の世界を明るいイメージに刷新します。

あなたのお仕事について具体的に教えてください。

株式会社とっとリンク代表取締役兼、一般社団法人日本障がい者ファッション協会代表理事。 元美容師から美容専門学校の教員へ。その後東京未来大学こどもみらい園 副園長及び東京未来大学みらいフリースクール 副スクール長を兼務する。2016年4月『日本一オシャレな福祉施設』放課後等デイサービスみらい教室を僅か3年で4教室へと展開。現在は同志社大学をはじめ市や教育機関での講演や若者への起業セミナー等も積極的に行う。過去受賞歴にあまがさきビジネスプランコンテスト2017準グランプリや一般社団法人日本介護協会主催 介護甲子園セミファイナル進出決定(7671エントリー中30施設のみ)等様々な分野で活躍中。著書に「とと」と「とっと」と「発達障害」(galaxy books)がある。

2016年4月に起業し、“日本一おしゃれな福祉施設”をテーマにした、『放課後等デイサービスみらい教室』を運営する株式会社とっとリンクの代表取締役です。

教室では主に、発達障がいのある子どもたちに向けてのサポートを行っています。発達障がいには多くの種類があり、自閉症やADHD、中でも圧倒的に多いのが学習障がいなんです。読み書きや計算を学ぶ、ソーシャルスキルトレーニングで困難を抱えている方がすごく多くて。実際、親子で宿題に向かうと、けんかになることも多いでしょう。「このやり方は学校で教わってない」なんて、こだわりが強い子も多いですし、学習に対するニーズが高いことはよくわかっていました。

また、福祉の施設は、薄暗くて殺風景なところが多い印象があります。『みらい教室』立ち上げ時に、保護者の方300人ぐらいに話を聞いたところ、共通して仰っていたのが「明るくおしゃれな施設に通いたい」という希望。そもそも福祉業界は、国から補助金が出る事業なので競争原理が非常に働きにくくて。そこまで企業努力が必要ないというか…そういう状況に「ナメんなよ!」と憤り、まず誰も見たことのないおしゃれな場所を作ろうと考えました。

加えて、障がいがあるから通う施設というよりは、逆に“障がいがあるから通える”場所を目指しました。“まだ見たことがない”をテーマに内装もこだわって、例えば「僕も行きたい!」と言ってくれる子どもがいても、発達障がいをもっていないと来れないような。常識をひっくり返したくて1店舗目を開業すると、たくさんの方に集まっていただきました。ただ、どうしても待機者が出てしまうことが辛く、2店舗目・3店舗目と足早に出店しました。2020年に開業した4店舗目(立花教室)は、蜂蜜の会社と提携。蜂蜜は、脳や体にいい影響があると言われていますよね(1歳未満の赤ちゃんは避ける)。そういう面でも福祉と相性がいいかなと、内装も蜂蜜をテーマに近未来化したデザインを施しました。

発達障がいには、生きるのが困難な部分はありますが、誰しもにある凸凹の差が大きいだけ。私はいろんなことをできるようになるよりも、「これだけはできる!」という自己肯定感を持てる道の方が、生きるうえでは必要だと思っています。高い能力を秘めているのに自信がない、そんな人もいますよね。それってものすごく損している。逆も然りで、ほとんど何もできなくても自信満々!な子とか。どちらが成功する確率が高いかというと、後者ですよね。だから子ども時代に、自然と自己肯定感を育める環境が必要だと感じています。

この仕事を始めたきっかけを教えてください。

私は元々、美容師として働いていましたが、使用する薬液が合わず苦労し、紹介された美容専門学校の教員へと転職しました。そこは全国的に展開している大規模な学校で、トータル14年間在籍。前半7年は教員、後半の7年は学校の運営に関わっていました。福祉に目を向ける最初のきっかけは、在籍中に生まれた自分の子どもに、発達障がいがあったことがきっかけですね。

初めは息子のことを理解するのに苦労を重ねました。細かく時間を尋ねられたり、この道じゃないと絶対進めなかったり。かと思えば世界地図を見て全ての首都を覚えていたりとか。

自分の子どもの頃を思い返すと、私は親に怒られた記憶があまりありませんでした。好きなことをやらせてもらって、のびのび育ってきた。きっと自分の凸凹の個性を伸ばしてもらってたんでしょう。それを思い出したとき、私は息子に逆のことを言ってたなと。できないことを何とかしてあげようと、短所にばかり目が向いていた。そうではなく、長所をどう生かすかが大切だと思い直したんです。

そういう目線で見ていくと、息子は私より長けているところもたくさんあって。記憶力なんか太刀打ちできませんし。そういった一点集中の強みを生かしていけないかなと思い、当時の勤務先である専門学校で、発達障がいの長所を伸ばすためのフリースクール開設をプレゼンし、晴れて認められました。その事業は当時ではなかなか珍しいもので。全国紙の取材を受けるなど注目いただき、責任者として多忙な日々でした。ただ、気付けば我が子との時間が減ってしまって。子どものためを思っての事業で、我が子との時間が減ることに疑問を感じたんですね。3年ぐらい続けていたなか退職を決意し、起業することになりました。紆余曲折はありましたが、起業から3年で4店舗の放課後デイサービスを運営しています。

あなたの強みは何ですか?

想いをかたちに変える行動力です。こう!と決めたらやり切るまで止まれない。成功しようが失敗しようが、やり切らないとどうにも気持ち悪くて。この辺でいいか…という妥協ができないですね。口に出したら、もうやるしかないですから。「できる!」と口にすれば実現できる。口(くち)という漢字に1万人の万と書けば“ロマン”とも読めます。1万人ぐらいたくさんの人に言い続ければ夢はかなうんじゃないか、そんな風に考えています。

あなたの使命とはなんですか?

福祉とおしゃれを掛け合わせて、障がい・福祉業界に対するイメージを明るくすることです。私の生涯を懸けている使命ですね。

2019年には、一般社団法人日本障がい者ファッション協会を立ち上げました。福祉とおしゃれで世の中を変えたい、ひたすらにおもしろいことをやろうぜ!と作ったもの。となれば、おしゃれの最高峰『パリ・コレクション』=『パリコレ』を目指さねばなりませんよね? まだ『パリコレ』に車椅子でのモデルは出たことがないそうで、それなら車椅子での障がい者ファッションがランウェイを飾ったらめちゃくちゃおもしろいなと! そうなったあとの世の中は、果たしてどういう見え方になるんでしょう? 障がいに対する偏見や価値観が変わって、パラダイムシフトが起こるんじゃないかと思うんです。

最後にあなたのこれからの夢を聞かせてください。

夢はたくさんあります。まずは、今の福祉業界は3K=きつい・汚い・危険と言われていますが、私は意地でも“3I”に変えてやろうと。3つのIとは、イケてる・生きがいがある・いい仕事…それぞれには定義があります。まずイケてる=他の人が憧れるような仕事、次に生きがいがある=自分の使命を感じられる仕事だということ。最後にいい仕事=ワークライフバランスや使命…全部をひっくるめて本当にやりがいのある仕事だということです。

私は現在、兵庫県尼崎市に住んでいますが、2021年には5店舗目の出店を控えています。それを機に、尼崎を明るい華やかな福祉の街にする…これも夢のひとつです。尼崎に“3I”を持ち込んで、それまでの暗いイメージの施設は淘汰されていく、そうすると必然的にサービスのクオリティは上がっていきます。福祉施設はおしゃれで華やか、それが当たり前なんだよと、そういう意識を広げていきたいですね。障がい児教育なら尼崎がいいね、となるようなね。

また、一般社団法人日本障がい者ファッション協会では、身体障がいのある方へのファッションも作り始めています。きっかけは、ある車椅子ユーザーの方にお会いしたことが始まりでした。10〜20代の若い時はおしゃれに興味があったけれど、徐々になくなって…という話をされていて。なぜかというと、試着の際に人の手を借りる必要があり、おしゃれ=自分の欲求のために迷惑をかけるということが少しずつ心苦しく、自分で心にふたをしてしまったと。何だか胸が締め付けられるような思いがしたんです。ならば、簡単に着ることのできる服を作ろうと企画しました。それが結実したのがオリジナルの巻きスカート『bottom’all』(ボトモール=ボトム+オールを組み合わせた造語)です。ただの巻きスカートではおもしろくないから男性も着られるものを目指した結果、ジェンダーレスでエイジレス、ボーダーレス…誰でもはいたらかっこよくなれる。そんな象徴的なアイテムになりました。ブランド名も『bottom’all』と掲げて。

先日、サッカーJ1のチームにユニフォームを納めている会社とご縁がありまして。サッカーのユニフォームは破れにくく速乾性があり、洗濯の耐久性も高い。この生地で『bottom’all』を作ったらいいんじゃないかという話もありますね。生地には印刷もできるので、生地のデザインをアーティストにお願いしたり、クラウドファンディングに挑戦してみようかなどとも考えています。いずれは『bottom’all』を、メンズボトムスの定番としても浸透させていきたいところですね。ユニクロへの企画提案の機会もあるので、熱量高くプレゼンを行っていこうと思っています。

個人的な目標は、テレビ番組『情熱大陸』に出ないとアカン!と思っていて。2020年度中にはオファーがこないといけないぐらい(笑)! こんなに情熱を持っているんですから。出展しないといけない、そう思う理由は“拡声器”がないと世の中は変えられないからです。『パリコレ』出展も含め、どれも通過点の話なんです。まだまだ社会には偏見も根強い。オリンピックよりパラリンピックが盛り上がらないようにね。この偏見をどこから崩していこうかと思ったとき、視覚で崩していく=おしゃれをキーワードにすることは、きっと強い効果があると信じています。

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