DREAM INTERVIEW

各界リーダーへの夢インタビュー

高瀬比左子
未来をつくるkaigoカフェ 代表/ 介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員/
未来をつくるkaigoカフェ 高瀬比左子

対話力を持つ“つなぎ役”を増やし、介護に関わる。人々が心身ともに健やかに活躍できる社会をつくる。

—あなたのお仕事について具体的に教えてください。

私は2012年から、介護職やケアに関わる人々が集まる場『未来をつくるkaigoカフェ』(以下『kaigoカフェ』)を始めました。もともとは介護や医療等に関するテーマを軸に、月1回、都内のリアルなカフェで実施してきました。テーマは現場のケアに基づくものもあれば、介護の本質に関わるものなど多岐に渡り、普段、なかなか職場の同僚や友人同士では話題に上らないような対話ができます。現場のケア向上や地域との接点も見出そうとしている向上心を持った方が集ってくださっています。職員間で対話の時間を持つことで、チームでよりよいケアを追求していこう、という方向性を共有できるようになった…といった声が上がるなど、カフェで得た学びや気付きを現場に還元してくださっています。

コロナ禍の現在はオンラインでの開催がメインとなりますが、職場内で受けられるスタイルなど、共に高め合えることを目指しています。オンラインのおかげで、全国の方に参加いただけるようになりました。

その他の活動として、地域や学校、行政のイベント等での出張版『kaigoカフェ』を開催したり、同様の企画のサポートも。加えて一般企業と行政とのコラボレーション企画、各種イベントやシンポジウムの企画提案・実施、WEBにおける広報、さらに介護福祉職や医療の専門職によるオンライン授業なども行っています。

カフェの運営のコツやファシリテーションを学んで頂くための『未来をつくるkaigoカフェファシリテーター講座』は、『kaigoカフェ』がスタートしてしばらくして、「私の地域でもケアにまつわるテーマで対話できる場がほしい」「地域を巻き込んだ場をつくりたい」という声を多くいただいたことがきっかけで始めています。幅広い意味で“つなぎ役”となる方を養成する講座です。この講座をきっかけに、参加された方が各地に自分らしい場を立ち上げられ、その数は50にも上ります。カフェを始めた当初から、カフェのような場が各地に必要と考えていたので、当初の目標が段々と実現できていると感じています。

—この仕事を始めたきっかけを教えてください。

大学卒業後は一般企業へ就職しましたが、自分が貢献できていることを実感できる仕事に就きたいと思い、介護福祉業界へと転職しました。たまたま所属の法人で訪問介護事業所の立ち上げがあり、現場で勤務することになったことが私の転機になりました。

訪問介護の現場で働いていたときは、常勤ヘルパーは私だけで、何もかもやらざるを得ない状況で苦労もありましたが、その反面やりがいも感じていました。私が来ることを楽しみに待っていてくださる利用者様の存在もあり、1対1のコミュニケーションの魅力を実感し、介護の仕事に対してすごく愛着を持つことができました。

訪問介護事業所の経験からケアマネの資格を取り、今度は施設でケアマネをするようになりました。施設の現場では様々な悩みや孤独感を抱えている職員に出会いました。同僚や上司、多職種との対話がままならない状況が多く、私自身も様々なコミュニケーションギャップに悩む当事者でした。そんな中、同じ職場内ではなかなか話せない悩みや課題を外部の人と対話をすることで解決のヒントや、未来を切り開くきっかけをつくることができるのではないかと思ったことが『kaigoカフェ』を始めるきっかけです。

介護の現場で対話力はとても大切な要素です。利用者の方同士をつなぐ、他職種をつなぐ、また地域をつなぐ役目も必要で、いろんな意味で“つなぎ役”としての必要性がある職種だと感じています。

—あなたの強みは何ですか?

『kaigoカフェ』を続けられたことから、長く何かを続けることは私の強みかもしれません。その原動力は、必要としてくれている方の存在です。

介護に対する世間の評価やイメージは、少しずつですが良い方向に向いているようにも思います。『kaigoカフェ』に集ってくださるいきいきと働く方々のことを、もっと知ってもらいたい…そんな思いも、続けていける原動力の一つかもしれませんね。

—あなたの使命とは何ですか?

毎日を楽しんでいきいきと働いている人々を増やしていくことです。利用者の方と伴走するスタッフが前向きになれずいつも疲れていたら、利用者の方も幸せにはなれないですよね。ケアに関わる人こそ、日頃から幸せを感じて豊かに生きる必要があります。それが『kaigoカフェ』の活動の原点です。

現在は、コロナの影響で現場にも辛い状況が続いていますが、自分の時間を大事にして豊かに生きてもらいたいと思います。

—最後にあなたのこれからの夢を聞かせてください。

もっと介護を当たり前に、身近な社会にしたいと考えています。介護と聞くと、自分ごとにならない限り関わりたくないという人も少なくありません。でも、街中のどこにいても介護福祉士やケアにまつわる専門職の人が働けるような環境があると、安心して暮らしていけるのではないでしょうか?まずは介護を身近なものに感じ、知ってもらうためのアクションとして、小、中、高校生を対象にした出張版『kaigoカフェ』を行ったり、仲間たちは認知症サポーター講座や地域の方への啓蒙・啓発活動を行っています。

これからは障がいがあっても認知症になっても、誰もが共存していける社会が必要です。しかし、現場レベルでは共生にまつわる施策は、なかなか進んでいません。『kaigoカフェ』では、地域づくりをテーマにした企画も頻繁に行い、共生がかなう社会/取り組みができる、未来のモデルケースやビジョンを共有することから始めています。未来像が見えると目標意識ができますよね。そういった共生の社会づくりに欠かせない、地域の“つなぎ役”を増やしていきたいですね。

私は、持続可能な社会=SDGsの視点からも、介護は欠かせない職種だと考えています。働き手は高齢になっても役割がありますし、世の中の役に立ち続けることができます。介護に関わる仕事に就いていると、いろんな背景の方と深く接する機会が多く、コミュニケーション力を磨くことができます。自分から働きかける場面がとても多いからです。対人サービスは介護以外にもたくさんあり、それぞれに価値がありますが、介護ほどより深く人間と関わることができる仕事はないのではないでしょうか?kaigoカフェは、介護の価値を発信し、誇りをもって働ける人や、現場でいきいきと豊かに働ける人を増やしていくことを後押しできるような場であれたらと思っています。

HP

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